2023年 03月 29日
「洋酒天国」のグラビア
お酒についての本をあれこれ読んでいるうちに吉行淳之介・開高健『対談 美酒について』(新潮文庫)に再会し、併せて未読だったお二人のもうひとつの対談『街に顔があった頃』(同)にも手を伸ばしてみた。
吉行、開高ともに対談の名手として知られている。出版社は『街に顔があった頃』について「この本は、良き時代の浅草・銀座・新宿を知る両氏が、街の顔を彩り演出してきた女たちにまつわる思い出を語った〈猥談〉です」と説明を加えている。
一読、たしかに浅草、銀座、新宿のかつての街の「顔」を話題にしているが、その多くは風俗、あっさりいえば性談で、「美酒」に較べるといささか時代が付きすぎていると感じた。美酒に較べるとこの種のことがらは古くなりやすいのかな。それに古稀をすぎた当方としてもいまさらセックス談義でもなかろうという気持がある。そんな思いを超えるとあるいは谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』の卯木督助老人の域に達するかもしれないけれど、まだ少し時間がかかるようだ。
それはともかく『街に顔があった頃』で開高健が、かつての浅草はレトロとモダンが共存した場所だったのに「ヌード、全ストをやるようになってから、浅草のモダニズムとインテリ趣味は消えちゃったな。で、次に私が移ったのが日劇ミュージックホール。これは、なかなかよかったですよ」と述べて、ハダカから見た浅草と丸の内の関係を分析していた。 そしてミュージックホールについて「あそこではずいぶんヒントを得たな、雑誌編集の。当時、私は『洋酒天国』(さんとをやってましたから」と続けていた。
手許にある「洋酒天国」のアンソロジー『洋酒天国1ー酒と女と青春ー』(開高健監修、新潮文庫)のグラビアには《昭和33年4月から、「洋酒天国」に毎号折込みのピンナップ・ヌード(ヨーテンスコープ)が毎号登場し、読者は胸をドキドキさせながら裸女を鑑賞した》との説明とともにミュージックホールのダンサーだった小川久美、五月美沙、葵美代のセミヌードが掲載されている。
そしてこの「洋酒天国」に毎号折込みのピンナップ・ヌードが「平凡パンチ」「プレイボーイ」等男性雑誌のピンナップ・ヌードの原型となったのだった。