谷崎潤一郎と春川ますみとの対談

 谷崎潤一郎が春川ますみを贔屓にしていたのはよく知られている。そのお気に入りの女優との対談が『谷崎潤一郎対談集―藝能編』(小谷野敦、細江光編、中央公論新社2014.9)に収録されている。同年三月熱海の谷崎邸で行われた対談は講談社発行の雑誌「日本」の一九五九年(昭和三十四年)五月号に掲載された。
 「彼女の映画入りにさきがけて巨匠が病をおしての激励対談!」と編集部の前書きにあるように春川ますみはこの年のお正月に公開された「グラマ島の誘惑」と「続・社長三代記」に出演しており、 すでにミュージックホールを引いて映画界に入る決心をしていた。
この年の二月二十六日から五月五日までミュージックホールの公演は「白日夢」で、谷崎は構成演出者に名前を列ねている。これが春川ますみのミュージックホール最後の舞台であり、奇しくも谷崎の作品に送られるかたちで映画界入りしたのだった。それを寿ぐように「巨匠」は「君はこの前会った時より美人になったね。どうも映画の世界に入ると舞台の時より美人になる」とサービスに務めている。
 春川ますみのあだなは「ダルマちゃん」。この対談によるとさいしょに雪ダルマで出たのがはじまりだそうだが、この対談のころは「マ」が抜けて「ダルちゃん」と言われていたとか。浅草時代はメリー・ローズの名前で踊っていて、その風貌から「ダルマちゃん」とともに「ジャンボちゃん」の愛称もあったという。
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by yumenonokoriga | 2014-12-25 09:20 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(0)