紳士は・・・がお好き

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 丸尾長顕がしばしば上せる話題に、日本の男どもはグラマー型を好む者が多いのか、それともスレンダー型や中間型かといった問題がある。日劇ミュージックホール初期のスターのうち丸尾がグラマー型として挙げるのが伊吹まりとジプシー・ローズで「やや脂肪質の、極度に曲線的で、ヴォリュームがあって、性的なエネルギーを発散している多産型の肉体」と述べいる。二人とは異なるタイプとして小川久美がいて、その中間に小浜奈々子がいるというのが丸尾の描く図式である。(『女体美』)
 もっともおなじスレンダー型といってもヌードダンサーとファッションモデルとは異なる。踊り子は脱いで見せなくてはいけないけれどモデルは着て見せるのが商売だからあたりまえの話で、そこのところについてさきごろ亡くなられた丸谷才一さんの『たった一人の反乱』に男心の琴線に触れる叙述がある。
 馬淵英介という元通産官僚で、家電メーカーに天下った四十代半ばの男が大学の同級生で、ビール会社のコマーシャル誌の編集長をしている小栗と偶然出会ったところへ、コマーシャルの仕事を終えたモデルのマヨと彼女の仲間のユカリがやってきて四人で飲みに出かけることとなる。
 酒席で冗談を言い合っているうちに編集長がマヨを「マヨ、お前また太ったようだぞ。この調子で育ってゆけば、もうすぐミュージック・ホールから声がかかる」とからかう。すると当のモデルは「いやねえ、小栗さんたら。いつも同じ冗談ばかり」と応じる。非の打ち所がないような躰つきのモデルに比較してヌードダンサーはより肉感があったほうがよい、という編集長の冗談めかした発言は多くの男が共有する感じ方であろう。
 四人の会食がお開きになって編集長はマヨを、馬淵はユカリをそれぞれ送っていくことになり、馬淵はユカリを彼女のアパートまで送り届け、もちろん到着前に電話番号を聞き出している。そのあと馬淵とタクシーの運転手のやりとり。
 「お客さん、今の女の子、なかなかきれいですね」
 「そうかい」
 「そうですよ。ちゃーんと見てるんだから。踊り子ですか?」
 ここでマヨをミュージックホールのダンサー候補に仕立てた編集長の言葉がユカリにまで及んできてミュージックホールのファン心理をくすぐる。
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by yumenonokoriga | 2013-01-20 09:17 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(0)