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夢の残り香~日劇ミュージックホールの文学誌

「りべらるショー」

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 日本のストリップショーは名画を模した額縁のなかにヌードの女性がはいる「額縁ショー」にはじまるとされている。一九四七年(昭和二十二年)一月十五日、新宿帝都座五階の劇場で行われたショーの額縁に入ったのは甲斐三和という十九歳のダンサーだった。
 いっぽう日劇小劇場で、はだかが注目を浴びたのは同年三月の東京レビューの公演だった。ベリーダンスの鈴木好子やアクロバットをまじえた踊りのエミー白川がエロティックで話題を呼んだ。鈴木好子のベリーダンスは、ヘソを出して踊りながらつぎつぎに衣装を脱いでゆき、最後には股間と胸を覆っただけの姿になって暗転というもので、ヘソの露出だけでも大きな刺激だったというから額縁ショーとともに時代を感じさせる。
 東京レビューは堺俊二(堺正章の父君)、玉島精二、滝沢ノボル、華村明子、桜むつ子、錦ルミ、鈴木好子らのグループに新たに菅富士男(須賀富士男)、波多美喜子、丹下キヨ子らが加わって誕生した劇団で、日劇小劇場での演し物は「りべらるショー『院長さんは恋がお好き』」だった。のちにしばしば小津映画に出演した桜むつ子と須賀富士男が目を引く。桜むつ子は永井荷風のお気に入りの女優だった。
 戦後の混乱期を象徴する出版物として性風俗を売り物とするカストリ雑誌がある。粗悪な用紙に印刷された安価な雑誌で、エロとグロの記事が紙面を飾った。
「りべらる」「別冊モダン日本」(吉行淳之介はこの雑誌の編集者だった)「夫婦生活」「千一夜」「猟奇」「ロマンス」「裏窓」などが有名で、なかでも昭和二十年十二月に発売された「りべらる」創刊号は二十万部を売り上げ、これに触発されて雑誌創刊が相次いだといわれる。そこで「りべらるショー」と銘打てばそれだけで妖しい雰囲気が漂ったのである。
 こうして日劇小劇場ははだかが見られる劇場として話題を集めた。ただしそうなればつぎには衣装付きのレビュー(普通ショーと名付けられていた)では観客は満足しなくなり、はだかレビューつまりストリップでないと客が呼べなくなり、軽演劇集団は苦境に追い込まれた。東京レビューの公演ははだかで話題を集めたものの、それがかえって仇となり自身の首を絞める結果となった。
by yumenonokoriga | 2013-05-10 08:49 | 日劇ミュージックホールの文学誌

いまはない日劇ミュージックホールをめぐるコラムです。

by yumenonokoriga
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