「デベソ」泣き笑い

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 岡田恵吉『女のシリ・シンフォニー』に収める写真のなかに日劇小劇場のフィナーレを撮った一枚がある。もともとヌード劇場として構えられたところではないから当然だが、これを見ると日小時代には「デベソ」という張り出し舞台はまだ設けられていない。
 大改装工事のあと日劇ミュージックホールとして再開場したときがお披露目だった。こうしたセリは多くのストリップ劇場にあったが、ミュージックホール中央の円形舞台は回転するのにくわえ、上げ下げして出演者を運んだ。東宝の威力を誇示した設備は他の劇場を凌駕した。
 丸尾長顕編『日劇ミュージック・ホールのすべて』によると直径およそ三メートル、二十九秒で上げ下げしたとある。丸尾が「このセリに乗ってヌードがセリ上がってくるときには、観客はまるでヌードの肌に触れるほどの近さにあって、思わず圧倒されるような感じを受ける」と自讃する舞台だった。
 ただしこの装置は小柳祥助『G線上のマリア』によると案外と出演者泣かせで、ここで泣きをみた事例がいくつか紹介されている。
 〈日劇ダンシングチームの福田富子はセリが上がるとき、回転するシャフトに髪の毛をむしりとられ、直径五センチほどのハゲになった。
 ヌードダンサーの奈良あけみはシャフトにスカートを巻きこまれ、悲鳴をあげた。
 セリが下りているあいだは、深い谷間ができる。そのフチを踊るダンサーは視線が穴へ向くと足がふるえた。専属の新谷登がこのセリに落ちて足を痛めて約一ヵ月休演した。〉
 セリの中に入り、上がるのを待つ時間はお互いの衣装をチェックするなど注意を喚起しあう場でもあったが、ここにも人間関係が反映する。新参のジプシー・ローズの人気に嫉妬した連中は彼女をシカトし、衣装の順番をミスしているのに気がついても知らん顔をしていたことがあったという。
 ともあれミュージックホールの回転し、出演者の出し入れのできる装置の導入は日劇小劇場のころに比較して、演出の手法を大きく高め、広げたことはまちがいない。
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by yumenonokoriga | 2013-12-15 08:54 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(2)

Commented by 秋山薫 at 2014-02-06 21:18 x
今まで気になっていたのですが上の写真真ん中のダンサーは誰ですか。
Commented by yumenonokoriga at 2014-02-06 22:44
☆秋山さま
中央、朱雀さぎり、向かって左アンジェラ浅丘、右応蘭芳(アンジェラとは従姉妹の関係だったと思います)です。