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夢の残り香~日劇ミュージックホールの文学誌

脚線美

日本の創作ミュージカルの草分け的存在でありテレビ朝日の音楽番組「題名のない音楽会」の企画構成者としても知られる藤田敏男は日劇ミュージックホール昭和五十年(一九七五年)九月十月公演「ニンフェットは蜜がお好き」と翌年同月の「柔肌を濡らす甘い蜜」で演出を担当している。
パンフレットに寄せた「ミュージカルと脚線美」で演出家は「ウエストサイド物語」の作曲者レナード・バーンスタインの、ミュージカルはドラマと歌とダンスとスペクタクルと脚線美との言葉を引いて「私は特に〈脚線美〉という言葉を重視したい。というのは、私が最も共感を抱くのはその点で、日本製のミュージカルにはあまりに脚線美がなさすぎると常常思っているからです」と述べている。
ハリウッドに脚線美の魅力をもたらしたのはミュージカル映画だった。脚線美の歴史を語るときミュージカル映画は欠かせない。それはミュージカルのひとつの出発点でありながら日本の現状ではあまりにおざなりにされていると判断していた藤田がミュージックホールの演出を引き受けたのも、ここには日本のショービジネス界で閑却されているものが確実に存在するからだったという。
もっともなはなしでミュージックホールの生みの親である丸尾長顕からしてレッグアートをとても重要視していた。しばしば足はセックスを支える柱であり、セックスにおける「ローマへの道」だと強調した丸尾はその著『情事の手帳』にこうしるしている。
〈私の好みからいえば、足の美しくない女性は、絶対に性的対象にならない。足が美しくすんなりしていることは、長いということであり、足が長ければ背が高いということになる。私などサバをよんで五尺一寸の小柄だが、恋人や女房は五尺三寸以上あって、ハイヒールなど穿かれると、私の顔はオッパイのあたりにしか達しないのだが、それでも私は、足の長い女性以外には性的魅力を感じないのである。従って、私はいつも恋人や女房からは、見下ろされることを覚悟しなければならない宿命にある。〉
 この人の自慢話につきあうのはほどほどにしたいが丸尾長顕や藤田敏男の気持はよくわかる。
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by yumenonokoriga | 2014-07-30 08:03 | 日劇ミュージックホールの文学誌

いまはない日劇ミュージックホールをめぐるコラムです。

by yumenonokoriga
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