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「昭和の裸」

 先日リメイクされた「日本のいちばん長い日」を観た。ポツダム宣言受諾を決定した八月十四日昼の御前会議から十五日正午の玉音放送までの一日における戦争終結か継続かをめぐる白熱のドラマだ。
 陸軍の若手将校を中心とする本土決戦派は巻き返しの最後の試みとして近衛師団と東部方面軍を動かし天皇の吹き込んだ音盤を争奪したうえ、ラジオで徹底抗戦を呼びかけようとする。首謀人物の一人が畑中健二陸軍少佐でこの重要な役を松坂桃李が熱演している。
 ただ申しにくく、仕方のないことだけれど若い役者の軍人姿が発する昭和戦前の雰囲気は稀薄で、整った顔立ちが余計そう感じさせたのかもしれない。それとも一九六七年(昭和四十二年)製作の「日本のいちばん長い日」で畑中健二少佐に扮した黒沢年男の印象が強かったからか。昭和の黒沢年男の風貌に比較するとやはり松坂桃李は平成の顔だった。
 天皇の代替わりで容貌や骨相が変わるはずもないが、人々の嗜好から遺伝子の作用まで複雑な要因がからみあいながら歳月はこうしたところにも影響を及ぼしていて、そういえばMGMのミュージカル映画のハイライトシーンで構成したアンソロジー「ザッツ・エンタテインメント」におけるハリウッド初期のコーラスガールたちはいまの基準からするとだいぶん太目だった。
 一九二0年代から三十年代にかけてニューヨークのハーレム地区に実在した高級ナイトクラブ「コットンクラブ」を描いた同名の映画は一九八四年に作られているが、このときフランシス・フォード・コッポラ監督は当時の雰囲気を醸し出すために太目のコーラスガールを集めたと聞いたことがある。
 一九七四年生まれの映画監督西川美和が一九四八年生まれの谷ナオミに取材で会って(二000年頃のことらしい)そのときの元女優の肢体についてこんな感想を述べている。
 「全体にうっすらと丸みを帯びた、いかにも『昭和の裸』というタイプで、和服を着た時にジャストの体型というのだろうか、今の時代に裸で仕事をする各種の女優業の人たちとも肢体の類が明らかに違う」。(『映画にまつわるXについて』)
 日劇ミュージックホールには谷ナオミはじめ日活ロマンポルノの女優さんが何人か出演していたが、演技と踊りの違いだろう総じてヌードダンサーのほうがやわらかな筋肉が付いている印象がある。ミュージックホールが生き延びていたら「平成の裸」はどんなふうになっていたのだろう。
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by yumenonokoriga | 2015-09-02 09:45 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(0)