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夢の残り香~日劇ミュージックホールの文学誌

「プーサン」

 市川崑監督は一九一五年(大正四年)十一月二十日に生まれ、二00八年(平成二十年)二月十三日九十二歳で歿したからことしは生誕百年にあたる。池袋の新文芸坐では生誕百年祭として特集上映が行われており、さっそく初日の「愛人」と「プーサン」を観てきた。ともに東宝作品で一九五三年(昭和二十八年)に公開されている。
 ハリウッド映画の一ジャンルにスクリューボールコメディがある。スクリューボールは野球の変化球、つまりひねり球に喩えられる変人奇人、風変わりな男女が喧嘩をしながら恋愛劇を繰り広げる。クローデット・コルベールとクラーク・ゲーブルが共演した「或る夜の出来事」はその嚆矢にして代表作のひとつだ。
 「愛人」は恋のベクトルがあっち向いたり、こっち向いたりの大混戦、あらためて和製スクリューボールコメディの傑作と讃えたい。
 映画の越路吹雪は使われ方がいまひとつ物足りなかったが、市川監督は「愛人」「プーサン」でコメディエンヌとしてのコーちゃんの魅力を存分に引き出している。
 「プーサン」は横山泰三が昭和二十五年から昭和二十八年にかけて毎日新聞に連載された四コマ漫画を原作にしていて、当時の世相が風刺をこめて描かれている。
 なかでプーサンの伊藤雄之助とミス・ガンコの越路吹雪がストリップに行くシーンがある。詳しくは本コラム「映画のなかのミュージックホール」(2012/4/10)をご覧ください。二人の行った先が映画公開の前年昭和二十七年三月に開場した日劇ミュージックホール、踊るのは当時のトップスター、メリー松原。名物のデベソでスレンダータイプの彼女がダイナミックな踊りを披露する、いまとなってはたいへん貴重な映像だ。
 今回三度目の「プーサン」で気づいたがスクリーンのミュージックホールの舞台はセットのようだ。二人が劇場から出てきたところでミュージックホールの出入り口附近が撮影されていて、プーサンとミス・ガンコが観た公演のタイトルが「桃源の美女たち」だったと知れる。
「プーサン」_a0248606_1124932.png
by yumenonokoriga | 2015-12-03 11:24 | 日劇ミュージックホールの文学誌

いまはない日劇ミュージックホールをめぐるコラムです。

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