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新藤兼人と日劇ミュージックホール

 日劇ミュージックホールは演出に劇場専属の演出家にくわえ、しばしば作家、漫画家、映画監督、舞台演出家などをゲストとして招いていた。すぐれた人材によるバラエティに富んだ舞台づくりは、話題を呼びやすく営業上からも得策という一面もあった。
 公演リストを見ると三島由紀夫、村松梢風、武智鉄二、江戸川乱歩、谷崎潤一郎、清水崑、杉浦幸雄、久里洋二、小島功、石原慎太郎、戸川昌子、佐藤信、野末陳平、観世栄夫、福田善之、里吉しげみ、寺山修司、藤田敏雄、団鬼六、新藤兼人、竹邑類、内海重典、矢野誠一、林家正蔵、バロン吉元、勅使河原宏、黒鉄ヒロシ、山本晋也、なかにし礼、福地泡介、辻村ジュサブロー、水上勉、秋竜山、高橋伴明、蜷川幸雄といった名前が見えている。
 ミュージックホールと結びつきやすい人々がいるいっぽうでわたしには新藤兼人、林家正蔵は意外だった。前者は「殿方はピーナッツがお好き」(昭和五十一年四月二十三日~六月二十二日)後者は「夏の夜のピンクの夢」(昭和五十二年七月一日~八月二十三日)に名を列ねている。残念ながらどちらもわたしは観ていないが、たまたま手許に「殿方はピーナッツがお好き」のパンフレットがあり、第一部第八景の雨月物語を新藤監督が担当したと知れる。
 溝口健二監督、依田義賢脚本の同名映画にある「蛇性の婬」の舞台化で、貧しいせともの焼きの男が作ったものを金に代えようと都へ出て、魔性の女に魅入られこの家に居つくが、やがてこの女は没落した悲運の武将の姫の死霊と見抜いた僧の法力により男は危ないところを助けられるという話である。時間は八分、もちろんせりふはない。そこのところを新藤兼人は「舞踊だからコトバはない。実は、コトバははんらんしているのだが、声がないだけのことである。(中略)わかりきったことだが、ハダカは体ぜんたいでものをいう。体が、囁き、叫び、わめきちらす。哀訴、欲求、歓喜、哀しみは体ぜんたいからながれでる。モモがきしみ、コシがうねり、ハラがよじれるたびに、そこが、ものをいう。口でいうコトバのなんと小さく不自由なことよ。声のあるコトバではいえないコトバのはんらん」と述べている。
 映画で京マチ子が演じた役をここでは松永てるほが演じていておなじくパンフレットには「松永てるほの蛇性の婬を私は溝口健二にみせたい。溝口健二はきっとニコニコと相好を崩すにちがいない」とある。
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by yumenonokoriga | 2016-09-05 11:40 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(0)