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2012年 10月 30日 ( 1 )

神様のような肉体

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 版画家の棟方志功はジプシー・ローズを「神様のような肉体」と讃え、その肉体を板に彫りつけようと楽屋に通い詰めた。
 エキゾティックな美貌と雰囲気、百六十二センチ、五十八キロと当時の日本の女性としては大柄な肢体、バレーの基礎があり、くわえて芸熱心で努力の末に身に付けたグラインドの技術、これらの魅力は棟方志功ばかりでなく多くの人が語り伝えている。
 一九六七年(昭和四十二年)ジプシー・ローズ三十五歳の死はあまりにも早い。本コラムの筆者がはじめてミュージックホールの舞台を見たのが六九年だったから、言っても詮無いのだが、彼女が生きていたら三十七歳、まだ舞台に立っていたとしてもおかしくはない。その早すぎた死を思うとちょっとした行き違いで彼女の舞台に出会えなかったような気がしないでもない。
 田中小実昌は『楽屋ばなし』に「ともかく、とくべつなんだもの。ほかのストリッパーたちにくらべると、ジプシーはひかっていた、というのではない。くらべることを絶して、ジプシー・ローズはとくべつだった」と書いている。このジプシー讃歌は「ちょっとした行き違い」の口惜しさをますますつのらせる。
 もっともジプシーからすれば無理をして長く舞台に立つなんて彼女の矜持が許さなかったはずで、鉄火肌の彼女には芸歴を長くしようなんてせこいことであり、頭の片隅にもそんな考えはなかったと想像する。舞台に接し得なかったファンとしては、花の命を長引かせるより自身の肉体の伝説をつくるため生き急いだ感のあるその生涯を讃えてやるほかない。
 吉行淳之介が、松永てるほに、ミュージックホールの踊り子のほとんどが乳暈が小さいのを不思議に思い「それで、乳暈が大きいと、不都合があるのかな」と訊ねると彼女は「ええ、垂れる形になるのが、はやいんです」と答えている。
 乳房に限っても長く踊れるタイプとそうもいかないのがあるようで、このやりとりを意識してあらためてジプシー・ローズの写真を見れば・・・・・・読者諸賢でお確かめ下さい。          

by yumenonokoriga | 2012-10-30 10:30 | 日劇ミュージックホールの文学誌 | Comments(2)